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国産材コラム

住まい・木を語ろう

朴訥の論

「リフォームをして下さっているみなさんへ、今日も暑いですね、室内なので、熱中症にならないように気をつけて下さい。新しい部屋楽しみにしています。」このメッセージはお施主さんの小学4年生になるご長男からのものだ。それをボードに展示したのは、今年4月に建築士事務所民家に入社したN君である。

 

 

お施主さんから戴いたお茶菓子のお礼と共に彼が添えたのは、小さな木片(ヒノキ)とクイズだった。「これは何の木でしょう。どこに使われているか探して下さい」ご家族がその木片に興味を持ち、現場で探す光景が目に浮かぶ。翌日返事があり「ヒノキですね。どこに使われているか教えてください」

 

敷居に使われていること、鴨居はスギを使うが、踏む頻度の高い敷居には固いヒノキを使うこと等、常日頃考えている「住育」をN君が実践していた。

 

住育などと考える程に、物事は大層になり、小学校に出向いてなどと考えがちであるが、想いがあればどこでも誰にでも伝えられる。永年この運動に関わりながら新入社員に一本取られたようで、何とも嬉しい。

 

また8月から工事が始まるお施主さんは、ご家族で地鎮祭を行った。地元の神社にお参りをし、その足で用意したお酒、洗い米に塩を敷地の四隅に撒き、工事の無事をお祈りしたという。子供達にとっても住まいづくりの一歩として、暑い日に家族で行ったセレモニーは想い出として心に刻まれたことだろう。

 

一軒の家の完成迄にどれ程の職種と人が関わることか、その人たちにも家族がいて、一喜一憂していると考えれば気が遠くなる。住まいから学ぶことは数えきれない、一本の柱にも育った過程があり、役割がある。なぜその大きさで、そこに立つかにも理由があり、興味を持つほどにおもしろい。

 

もっとフランクに、食を語るように住や、木を語れば良い。長きに亘り同じことを言い続けていると鮮度を失いがちになる、忘れかけていたことを呼びさまされたようにも感じた。明日からは、ポケットにヒノキと杉の木片を入れておこう。

 

人間もっと素直に愚直にやればいいことを、周りくどくしていく。恒例の夏休みの親子向けイベントとして「ゆすの木のお箸づくり」を企画している。N君に倣ってクイズ形式で子ども達と「国産材」を大いに語り遊びたい。

 

(「木族」2016年8月号より)

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